隕石などの地球外物質中には H や N の重い同位体が濃集した有機物が一部存在し,分子雲起源の可能性が指摘されていますが,同位体濃縮が分子雲でどのようにできたかは明らかになっていません.極微量有機物に対して,網羅的に分子構造を同定し,同位体を含め世界最高感度で分析する手法を開発し,実験班と協力して合成する濃縮同位体をトレーサーとした模擬宇宙有機物の定性定量分析,有機化合物単位の構造解析・同位体分析をおこない,宇宙有機物生成過程と分子構造との関係を解明します.開発する分析方法を地球外物質中の有機物に適用し,隕石有機物分子と分子雲分子・原始惑星系分子を繋げる新しいマーカー分子・マーカー官能基を探索します.得られる宇宙有機分子進化解読のための知見は,炭素・水に富んだ始源小惑星からのリターンサンプルの分析研究の道標にもなることが期待されます.
ビッグバン以降,様々な構造が形成された宇宙の中で,46億年前に誕生した太陽系において分子がどのように進化し,惑星や地球,そして生命に至ったのかという疑問への答えに近づくことをめざします.宇宙で最も大量に存在する元素(H, C, O, N)からなる氷および有機物に着目し,星間分子雲から原始惑星系までの分子進化の全体像を実験・理論・観測・分析など多様な手法で探求し,惑星系形成の物理過程の解明に化学的視点を加えることをめざします.